
画像:https://www.legislation.gov.uk/ukpga/2025/29/enacted
近年、暗号資産の世界的な普及が急速に進む中で、その法的地位が大きな議論の焦点となっています。従来、不動産法では資産を主に2種類に分類してきました。ひとつは不動産や車両、物品などの有体物、もうひとつは株式や債権といった無体債権や契約上の権利です。しかし、暗号資産やNFTなどのデジタル資産は「有体物でも契約債権でもない」ため、どちらにも明確に該当せず、法的地位の不確実性が続いていました。
2025年12月、英国議会はProperty (Digital Assets etc) Act 2025を制定し、王室裁可を受けました。これにより、英国はデジタル資産を個人財産の第3のカテゴリーとして正式に認めました。同法は、暗号資産、ステーブルコイン、NFTを含むデジタル資産を個人財産として明確に規定し、従来の資産と同等の法的保護を付与しています。
新法の主なポイントは以下の通りです。
この法改正は、暗号資産保有者にとって大きな前進です。これまでデジタル資産の法的地位が不明確だったため、ハッキングや詐欺、取引所破綻、相続争いなどで資産を失った場合、その回復はきわめて困難でした。今回、デジタル資産が明確に法的財産と認められたことで、保有者は強固な法的保護を受けられるようになり、セキュリティと正当性が大幅に向上します。
業界や市場の観点から見ると、今回の動きは英国がグローバルなデジタル資産ハブを目指す意欲の表れです。新法は既存の暗号資産保有者や投資家の信頼を高めるだけでなく、今後のプロジェクト立ち上げや投資、機関参入、資産承継のための確かな法的基盤を築きます。この明確な法的枠組みにより、世界中からデジタル資産関連のビジネスや人材を呼び込みやすくなり、英国はWeb3および暗号資産分野の規制・発展でリーダーシップを強化できるでしょう。
Property (Digital Assets etc) Act 2025の成立とデジタル資産の個人財産への分類により、英国はデジタル経済の発展と法制度の近代化において大きな一歩を踏み出しました。暗号資産ユーザーにとって、これは単なる法的認知にとどまらず、セキュリティや追跡性、相続権、規制監督の強化を意味します。デジタル資産は標準化と成熟化を経て主流化しつつあり、他国でも同様の法整備が進むことで、デジタル資産の法的枠組みが世界的に加速していくでしょう。





