なぜXRPは見過ごされ続けるのか：ユーティリティと市場価格のギャップ

暗号資産市場は良いストーリーを好む――しかし時には、最高のストーリーが価格に全く影響しないこともある。それがXRPの問題の本質だ。

ビットコインが注目を集め、イーサリアムが開発者の話題を独占する一方で、XRPは静かに本来の役割を果たしている。つまり、従来の金融よりも速く、安く国境を越えた資金移動を実現するのだ。しかしその市場評価は、この実用性を反映していない。なぜか？実際に何が起きているのか掘り下げてみよう。

XRPが本当に担う役割

投機の話はひとまず置いておこう。XRPの核となる機能は至ってシンプルだ。クロスボーダー決済のためのブリッジ資産であること。従来の国際送金は、複数の仲介業者を経由するため日数がかかり、手数料も高額になる。XRPはXRPレジャー上で数秒で取引を決済し、それらの問題を解決する。

機関投資家はこの点に注目し始めている。銀行はXRPを中立的な流動性として使うことで、資金移動の必要性に備えて各国で巨額の口座（(ノストロ口座)と呼ばれる）を保有する必要がなくなる。その結果、何十億もの資本が解放される。これは理論上の話ではなく、実際に機能しているインフラだ。

なぜ市場はまだ理解していないのか

ここにギャップがある。多くの個人投資家は、資産が実際に“何をするか”ではなく、短期的な値動きやFOMO（機会損失への恐れ）サイクルに基づいて暗号資産を評価している。XRPの価格安定性――本来は特徴であるべきもの――は、100倍を狙う投機的な話題と比べると弱さに見えてしまう。

投機主導の市場は、堅実で信頼できるインフラの価値をまだ織り込んでいない。銀行が頼れる決済レールは派手さこそないが、価値がある。

規制というワイルドカード

XRPは長年にわたり規制の不透明さに悩まされてきた。これは実際に普及の足かせとなっていた。しかし、ここに変化が訪れている。世界的にデジタル資産に関する枠組みが明確化されつつあり、機関投資家は法的リスクを気にせずにXRPを統合できるようになる。規制当局がXRPを脅威とみなすのをやめれば、普及は急加速する可能性がある。

オンチェーンデータが示す実態

指標を見てみよう：

• NVT比率：XRPの取引量は時価総額に対して高い。これは本来の実用性に比べて過小評価されているユーティリティトークンによく見られる現象だ。高い取引量、低い評価＝ミスプライシング。
• MVRV Zスコア：市場価値と実現価値の比較で、XRPは公正価値を下回って取引されていることが示されている。ネットワークは価格以上の“仕事”をしている。

これらは偶然の数字ではない。どちらも同じことを示している。XRPは実際に価値を生み出しているが、市場価格はそれに追いついていないのだ。

あまり知られていない供給メカニズム

XRPのトークノミクスも重要だ。総供給量の大部分はエスクローにロックされており、実際の流通供給量は表面的な数字よりもはるかに少ない。計画的な放出＝予期せぬ大量売却がない＝安定性。機関投資家にとって、これはまさに求めるポイントだ。

需要が高まれば、この限定的な供給が大きなアドバンテージとなる。

ETF要因

(もし)XRP ETFが登場すれば、機関資本が暗号資産の専門知識なしに規制されたチャネルを通じて流入することになる。ETFは資産への見方を一変させる――伝統金融にとって「本物」の資産として認識されるのだ。これが、市場がXRPの価値を根本的に見直すきっかけになるかもしれない。

もっと大きな視点

XRPが過小評価されているのは謎ではなく「遅延」だ。今の市場は投機と勢いに夢中になっている。実際に機能するインフラ系資産は、ミームコインや最新のAIブームほど速く動かない。

だが、最終的には実用性が重要になる。採用が加速し、規制の明確化が進み、機関需要が高まれば、市場はXRPが本来目指した「グローバル金融のインフラ」としての価値と向き合わざるを得なくなる。

問題は、XRPに価値があるかどうかではない。その価値に、市場よりも早く気づけるかどうかだ。