2025年のPerp DEXバトル総括:Hyperliquid独走から群雄割拠へ、2026年は本当の競争が始まる

導入:取引量で計測できない本質的な変化

2025年のオンチェーン永久契約市場は、表面上は派手な取引量の競争に見えて、実は深刻な「質と量の乖離」を示している。

年初、Hyperliquidが市場の70%以上を独占していたのに対し、下半期には10個以上の新型Perp DEXが参入。12月末時点で、Hyperliquidの市場シェアは約20%まで下落—数字だけ見れば「王者の陥落」だ。しかし本当はそうではない。

重要な指標を見ると状況は逆転する

未決済ポジション(Open Interest)で見ると、Hyperliquidは依然として全ネットワークの約49%を占め、約75億ドル。他の4プラットフォームの総OIの半分に相当する。つまり、短期スキャルピングの取引量は増加したが、実質的な資金の流入はまだHyperliquidに集中しているということだ。

Perp DEX市場の本当の顔:データの狂乱の背後にある真実

取引量ランキングは参考にならない理由

2025年9月、Asterは瞬く間に一日700億ドルの取引量を達成し、「次のHyperliquid」と期待された。だがその直後、データプラットフォームDeFiLlamaはAsterを削除。理由は「取引データが大型CEXと完全に同期し、重大な異常を検出」。

オンチェーン追跡では、Asterの96%のトークンが6つのウォレットに集中。その取引量/OI比率は58に達し、つまり同じポジションを58回回転させているということ。これは実質的には資金ではなく、インセンティブ駆動による自転車操業。

LighterはさらにシンプルなZero Fee戦略で取引量首位を獲得したが、その実態は

  • Vol/OI比率が8以上(正常値は1-2)
  • ユーザーはエアドロップのポイント報酬を狙った短期投機家ばかり
  • 10月中旬のダウンタイムで、LLP資金プールは10%の損失

つまり、取引量の多さ=プラットフォームの質ではなく、むしろ「インセンティブの太さ」を示す指標に成り下がった。

本当に価値がある指標:収入と安定性

EdgeXの月間手数料収入は2000万ドルを超え、年換算で約2.5億ドル。Hyperliquidに次ぐポジション。だがEdgxの取引量市場シェアは5-6%に過ぎない—つまり、ユーザー当たりの手数料貢献度がLighterの40倍以上ということだ。

この差は何か?ユーザーの質の違い

EdgeXはAmber Groupが孵化した機関投資家向けプラットフォーム。堅実なユーザーベースとそれに相応する流動性サポートがある。Paradexも同様で、特に機関トレーダーから信頼を獲得している。

2025年のPerp DEX5大勢力を冷静に分析

Hyperliquid:王者のポジション、動揺なし

  • 何が強いのか

    • 自社開発チェーン、毎秒20万件の取引処理能力
    • フロントエンドはバイナンス級、バックエンドは完全分散化
    • HLP(Hyperliquidity Protocol)により、資金とプラットフォームのウィンウィンモデル確立
    • 技術故障ゼロの安定性(10月の極端相場でもダウンなし)
  • 数字で見た実力

    • 24時間取引量:常に30-100億ドル範囲
    • OI:全ネットワークの49%(約75億ドル)
    • BTC永続契約:±0.01%範囲で500万ドルポジション収容可能
    • HYPE流通時価:約82億ドル(暗号資産第15位)
  • 課題

    • 自社開発チェーンの長期的なコンセンサス安全性が未検証
    • 競争激化により、新規ユーザー吸収ペースの鈍化は避けられない

Lighter:技術の野心家だが実装に課題

  • テクノロジー

    • ZK Rollup + StarkWareソリューション
    • 各取引が暗号化検証、取引プライバシー確保
    • 「エスケープポッド」メカニズム:L2障害時、ユーザーはメインネットに直接資金引き出し可能
  • ビジネスモデルの問題

    • Zero Feeで取引量首位を獲得
    • しかしプロトコル収入はゼロに近い
    • 収益モデルはエアドロップ後に再検証が必要
    • 資本を市場と交換しているだけで、商業的持続可能性が不明
  • 安定性懸念

    • 立ち上げ10日でメインネット崩壊とダウンタイム
    • UIの遅延やバグが散見
    • 極端な市場でシステムリスクを露呈

EdgeX:地味だが一番実力派

  • ビジネス基盤

    • Amber Group孵化(世界有数のマーケットメイカー)
    • 機関投資家向けの専門性に特化
    • 年間約5億ドルの手数料収入
  • 製品特性

    • 手数料率:指値注文0.012%、成行注文0.038%(業界最低級)
    • ±0.01%範囲でBTC600万ドル収容(Hyperliquidより優れている)
    • モバイル体験重視:iOS/Androidアプリ、MPC Wallet統合
  • 弱点

    • トークンをまだ発行していない
    • エアドロップの狂乱を逃しており、ブランド認知度で劣後
    • 「目立つところがない」ため一般ユーザーの関心薄い

Aster:バイナンスの期待、市場の失望

  • 初期の爆発

    • 2025年9月、1週間で2800%上昇
    • 短期間で日次取引量700億ドルに達する
    • 市場シェア一時50%以上
  • 転換点

    • データ疑惑でDeFiLlama削除
    • オンチェーン分析で96%のトークンが6ウォレット集中
    • 信用危機:価格は高値から大幅下落、現在$0.7付近
  • 2026年の見通し

    • バイナンスの支援がある限り市場シェア回復の可能性あり
    • しかし、信用の傷は簡単には癒えない

Paradex:多機能プラットフォームの野心

  • 製品差別化

    • Starknet L2上に構築、独立した「Paradex Network」
    • 永久先物+永久オプション+現物の統一プラットフォーム構想
    • 単一アカウント、複数の保証金モデル対応(段階別、全体、ポートフォリオ)
  • 規律あるインセンティブ

    • Vol/OI比率が1-2の正常水準を維持
    • 異常な取引量の山なし
    • 短期投機よりも長期価値を重視
  • 現状

    • TVL:約1.7億ドル
    • 日次取引量:約20億ドル
    • OI:約7.7億ドル
    • ニッチながら安定した成長軌道

Perp DEX市場が直面する5つの重大リスク

1. 技術脆弱性の拡大化

新型プラットフォームほど複雑なアーキテクチャを採用。脆弱性や故障の確率が高まる。

Lighterは立ち上げ直後にデータベース崩壊。Hyperliquidのコンセンサス安全性も長期検証を経ていない。スマートコントラクト脆弱性、マッチング故障、オラクル価格操作などのリスクは避けられない。

2. トークンエコノミーの暴発

各プラットフォームがトークン価格をエコシステムの「生命線」に位置付けている。

しかし市場は非常に変動性が高い。プラットフォームトークンが暴落すれば、ユーザーのモチベーション喪失、さらには「取り付け騒ぎ」につながる可能性。Lighterのトークン価格が期待値を下回れば、取引量のあるユーザーは瞬時に離脱するだろう。

3. 市場極端変動への耐性不足

オンチェーン契約市場はまだ小規模。異常な変動時に流動性枯渇、スリッページ急上昇の可能性。

2025年の「10月11日暴落」では190億ドルのポジション清算が発生。一部の低リスク耐性プラットフォームは崩壊、資金不足に陥る危険性がある。

4. 規制の不確定性

オンチェーンデリバティブ取引量の増加に伴い、規制当局の監視強化が確実。

多くの国で無許可プラットフォームが自国ユーザーに高レバレッジ取引を提供することを禁止。分散型とはいえ、規制圧力はユーザー信頼を損ないかねない。

5. 取引量水増しの蔓延

Asterのデータ捏造疑惑は序章に過ぎない。インセンティブ戦争が続く限り、洗い取引は消えない。

投資家は取引量ランキングに惑わされず、OI、手数料収入、ユーザー保持率など「ハード指標」に注目すべき。

2026年の展望:「野蛮な成長」から「精密な運営」へ

トレンド1:市場構造の再編

Hyperliquidは深いOI基盤でリーダーシップ維持の可能性が高い。

Lighterがユーザーアクティビティを保持できれば、取引量では最大の挑戦者に。EdgeXは機関市場でのシェア拡大。Paradexは製品差別化で第二階層からの躍進機会。

全体構造は「一強多弱」から「一超多強」へ。Hyperliquidが安定的に優位を保ちつつ、他社も各々のニッチを確立する競争図式。

トレンド2:「量」から「質」への転換

2025年の取引量ランキング競争から脱却。Vol/OI比率、手数料収入、ユーザー保持率など本質指標に回帰。

新規ユーザーの増加は有機的なものへ。過度なインセンティブ戦争は一段落し、代わりにユーザー体験向上に競争軸がシフト。

エアドロップ完了後、投機家が減少。真の需要を持つトレーダー比率が上昇。

トレンド3:製品多様化の加速

Paradexが計画する永久オプション+現物取引が試金石に。成功すれば他プラットフォームも追随。

新興の短期先物、RWA契約(金や株価指数など)の登場。ソーシャルトレーディング、アルゴリズム戦略の統合。

取引所と資産運用の融合が深まり、単なる「永久契約DEX」から「包括的デリバティブプラットフォーム」への進化。

トレンド4:規制フレームワークの成形

2026年は分散型デリバティブの規制ガイダンスが段階的に登場する可能性。

一部プラットフォームは「コンプライアンスウィンドウ」を設置し、規制要件を満たすバージョンを提供(dYdXの先例参照)。

Hyperliquidが米国市場深掘りを目指す場合、デリバティブ取引プラットフォーム(SEF)登録を検討するかも。

匿名オープンエントリーを保持しつつ、別途規制対応チャネルを開設する「二足の草鞋」戦略が主流に。

トレンド5:既存CEX巨頭の参入圧力

中央集権型取引所も黙っていられない。分散型契約市場のシェア奪取は戦略的必然。

既に某大型CEXは分散型製品展開を進行中。「中央集権型+分散型」の二軸サービス提供が新常識化。

新興プラットフォームも独自のDEXを孵化。オンチェーンの新理念で既存リーダーに挑戦。

競争が加速する一方、市場全体のパイ拡大とリソース流入も確実。

最後に:投資家が見落としてはいけない3つのポイント

  1. 取引量は虚栄心の指標

    • 必ずOI、手数料収入、Vol/OI比率で裏取りを
  2. 技術とビジネスの結合がすべて

    • 高性能だけでは生き残れない。持続可能な収入モデルが必須
  3. 規制との付き合い方が分岐点

    • コンプライアンスを恐れるのではなく、戦略的に取り込む企業が次のリーダーに

2026年のPerp DEX戦場は、取引量の派手さより「質実剛健さ」を問う。生き残るのは、ユーザーを騙さず、技術に誠実で、長期価値を信じる企業たちだ。

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